東京高等裁判所 昭和32年(う)2131号 判決
被告人 星野喜一郎
〔抄 録〕
ところで、記録を調べてみると、原審第一回公判調書には、その作成者として裁判所書記官酒井実の記名押印はあるが、同調書には裁判長の認印がなく、また裁判長に差支がある場合の手続も履践せられていないこと、まことに所論のとおりである。かかる公判調書は、刑事訴訟規則第四六条の規定に違反し、その正確性を欠き適法に公判手続が行われたことの証明ができない無効の調書というべきである。しかして、右調書に、同公判期日において証拠決定及びその取調がなされた旨記載されてある書証、証拠物の一部及び被告人供述、並びに同公判期日において証拠決定がなされた旨記載され、これにもとづいて後日施行せられた現場検証及び証人尋問の結果がいずれも原判決に原判示事実認定の証拠として挙示されていること記録上明白である。しからば、右公判調書の無効は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反であつて、弁護人の控訴趣意第一点の所論はこの点において理由があるものというべく、原判決は破棄を免れない。
(中野 尾後貫 堀真)